大阪・関西万博へ行ってみた
先月、社員数名を引き連れて、大阪・関西万博に行ってきた。
今回の旅は万博をメインに据え、私はいつもの調子で分刻みのスケジュールを組んだ。こう見えて、かなりの計画派である。
東京方面へ出張する際はフライトを使うが、関西のように飛行機と新幹線の所要時間があまり変わらない距離であれば、迷わず新幹線を選ぶ。座ってしまえばあとは静かな時間。サンドイッチと珈琲を片手に、ぼんやりと考え事をするのが心地よい。
今回も、北九州市八幡西区の黒崎駅を出発し、小倉駅から始発の新幹線に乗り込む予定だった。

朝一からトラブル発生
旅にトラブルはつきものとはよく言ったもので、出発早々、社員のひとりが焦った様子でこう言った。
「すみません、チケット会社に忘れました…」
目を見開き、ポケットやバッグをまさぐる姿は、まさに「やらかした」顔。時間的に一度戻っていては新幹線に間に合わない。だが、偶然その場にいた女性スタッフが、ご主人の車で送ってもらった直後だったことを思い出し、「戻ってもらって、小倉駅まで乗せてってもらえば?」と提案してくれた。
結果、彼は別ルートで小倉駅へ。なんとか合流できた。ご主人はそのまま出勤だったようで、朝からこちらの不手際で時間を取らせてしまったことに、感謝と申し訳なさが入り混じった。
EXPO、長蛇の列とクラフトビール
夢洲駅に到着したのは9時半。駅からメインゲートまではすぐだったが、予約は10時にもかかわらず、入場できたのは10時半過ぎ。空港並みのセキュリティチェックが、なかなか進まない。

とはいえ、天候は最高。快晴の空の下、心地よい風が吹いていた……が、早起きと移動の疲れで、皆くたくた。そこで、入場後すぐに日陰のベンチでクラフトビールを片手にしばし休憩することにした。これもまた旅の楽しみだ。

大屋根リングは、暑さを和らげる救世主だった。直径675メートル、外周2025メートル。5月でも日差しは強く、これがなければ真夏は熱中症の温床になるだろう。
パビリオンの長蛇の列に、社員たちのテンションも二分された。なかには「月の石が見たい」と主張する者もいたが、「そんなのネットで見ておけ」と却下し、外観だけをさらっと見学する方針に。気づけば皆2万歩近く歩いていた。日頃歩かない者にとっては、もはや修行である。

公式キャラクター「ミャクミャク」は、正直かわいくはない。しかし、なぜか目を離せない不思議な存在感だけはある。

30年ぶりの再会
今回、社員旅行で万博を選んだ理由はふたつある。ひとつは社員に非日常を体験させたかったこと。もうひとつは、個人的な理由だ。
かつてヨーロッパに住んでいた頃、旅をともにした友人がいた。ある日、別の友人から「彼、チェコのパビリオンの責任者らしいよ」と聞いた瞬間、なにかに突き動かされるように彼に会いたくなった。
なぜ今、ここに?会って直接、聞きたかった。
チェコ館でスタッフに名前を伝え、しばらくして現れた男は、当時の面影をそのまま残していた。
「Kenichi, long time no see.(健一、久しぶり)」
「お互い老けたな」と笑い合い、あっという間に時空を超えた。30年という時間は、まるでなかったかのように話は弾んだ。
彼は今、ドバイに拠点を構え、仕事の縁でチェコパビリオンに関わっているらしい。10月の閉幕まで大阪に滞在するという。
最後は抱き合って別れを惜しみ、「俺たちは本当の兄弟だ」と、胸をたたいて別れた。

チェコ館の目の前が、夜の噴水ショーやドローンショーの舞台になると知っていたこともあり、屋上のカフェバーでそのままゆったりと夜を迎えるつもりだった。
しかし、あいにくその日はプライベートパーティーで貸切とのこと。残念ではあったが、ここまで歩きに歩いた我々の体力はすでに限界。ショーを待たずして、少し早めにEXPO会場を後にすることにした。

本町付近の居酒屋にて
本町で見つけた居酒屋は、別館でほぼ貸切状態。全員が席に座れて、旅の疲れを癒やすには申し分なかった。
移動、スケジュール、食事……全体を振り返ってみて、今回の旅はすべてがうまくハマった気がする。

翌日は大阪城へ

大阪城を訪れるのは初めてだったが、まず驚いたのは、周囲の外国人観光客の多さだった。政令指定都市である北九州市とは、まるで別世界。福岡市と比べても、インバウンドの存在感は圧倒的に違う。
大阪城の中は近代的に改築され、今や博物館のよう。歴史の風情はあまり感じられなかった。少し負け惜しみかもしれないが、小倉城の白蟻に蝕まれながらも残る木材の方が、よほど時の重みを感じる。
ふと、こんなことを考えてしまう。
「どうしたら北九州をもっと観光都市にできるのだろう?」
万博から帰った今も、その問いは頭の片隅に残っている。